【短編】5回目のキス
「お疲れ様でしたー」
終わってスタジオを出る俺の腕に、相手役の女優が絡んできた。
「ねぇー圭矢君♪ 相談があってぇー」
無駄に開いた衣装から覗く胸を押し付けてきて、上目使い。
あぁ、この間作曲家も週刊誌に叩かれてたなー。
この前のは……男優だった?
これが、この人のやり方?
――売れてる芸能人にしか手を出さない女優。
だったかな?
俺も認められたって事なのかな。
なんて変に納得してしまった。
「圭矢君?」
「あぁ、俺急いでるんだ。ごめんね」
営業スマイルで交わし、楽屋へと戻ろうとした時、スタッフが配ってるグロスを見て声をかけた。
「ねぇ、それって」
「えっ? あぁ、撮影で使わなかったグロスですよ。
頂いたんで、いる人に配ってたんですー。
あっ、圭矢さんもいりませんか?
って……いりませんよね。
すみません、私馬鹿で」
「いや。1つ、ちょーだい?」
手を出した俺に『えっ!』と驚いたスタッフ。