【短編】5回目のキス
駄目かな?とでも言う顔で首を傾げると、慌てて5種類を差し出した。
「ぜっ全部どうぞっ」
「あはっ。1つでいいよ。んーっと……コレいい?」
選んだのはCMで使ったベージュじゃない、薄いピンク。
何となく、これが雫に1番似合うと思ったんだ。
「俺、明日の昼まで何もなかったよね?」
「うん? えーっと……」
楽屋に戻った俺の質問に、ペラペラと手帳を開き確認するマネージャーが、
『こんなに予定あるのによく覚えてるね』
なんて笑った。
にっこりと微笑んだ顔とは裏腹に、急いで支度を始める。
マネージャーに送ってもらい、家に入ってすぐ取り出した携帯。
電話の相手は勿論、雫。
自分の言いたい事を伝えるとそっけなく電話を切り、携帯を両手で握りしめ、
はぁーっ
と息を吐き出しながら頭を下げた。
女の子は、皆同じだと思ってた頃。
雫と出会った。