【短編】5回目のキス


でも俺が電話をすると、すぐ来てくれる。

それが嬉しいんだ。





「あっ、雫」

「んっ? 何?」



洗濯物を畳んでた雫が笑顔で返事をする。


その顔にドキッとしてしまい、思ってた言葉が出て来なくなってしまった。

“雫に似合うと思って”

そう差し出すはずのグロスを、


「貰ったから……あげる」


なんて素っ気ない言い方。



なのに、それを見ながらすっごい嬉しそうに喜んでくれる姿が、
嬉しくて、可愛くて。



「あ、そうだ。
ドラマの撮影でまた会えなくなるかも」



これは本当。
だけど少しくらい寂しがってくれるかな?



「あっ、そっか。
うん、頑張ってね。
すっ、進んでる?」



やっぱりね。
そうやって笑って応援してくれるんだよね?



「……うん」



応援してくれるのは嬉しい。
嬉しいのに……。




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