【短編】5回目のキス


早く1人になりたくて、すぐに着替えた。

携帯を開き見ないで押せるボタン。



いつもみたいに、一方的な電話じゃなくて。
雫から言われた“行く”という言葉。


それだけで喜んでしまう俺は、やっぱり雫が好きなんだと気付かされる。



雫が家に来てから我慢出来なくなった俺は……つい言ってしまった。

『俺ばっかりが雫を好きで嫌になる』
そんな言葉を感情的に発してしまったんだ。



普段なら、我慢出来るのに。

演技だって勉強したんだよ?
芸能人だしね。



でも……雫だけには。
雫だけは……駄目みたい。





目の前で涙を流し出した雫を見て驚いた。



「だって……初めて好きって言われたから。
本当はね? 不安で仕方なかった」



俺『好き』って言った事なかった?



「いつか私なんか……いらなくなっちゃうんじゃないか、とか」

「いらないなんて誰が言った?」



そんな風に思われてたの?

俺が想うみたいに。
雫も悩んでくれてたの?




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