【短編】5回目のキス
「いるわけないよ? 私は……圭矢だけが好きなんだもん」
雫の心臓が早くなったのがわかった。
なのに、どうして俺はこの言葉を聞くまで不安なんだろう?
「どうして? どうしてそんな事思ったの?」
すぐ俺に向けられた質問。
全部を言っても、重いって。
男のくせに……とか思わない?
いつも雫の言葉に答えれないのは、俺がそう思うから。
今までの俺だったら『女の子って面倒だな』って思ってたんだ。
だから、まさか自分がこんな事を思う男だったなんて思ってもみなかった。
“面倒な男”になるなんてー……。
「だって……雫、電話もして来ないし、メールも最低限の内容以外しないだろ?」
「え……? それは、圭矢、仕事だからね?」
「昔は、しつこい位に、連絡してきてたじゃん」
一瞬動いた雫の動きが止まった。
何、小さな事にこだわってんだろう。
電話やメールくらいで。
「俺が、どんなドラマとかCMとかしてても何も言わないでしょ?」
「しっ仕事だし……」
「だから……俺以外に居るんだって……」
そう言った後の沈黙。
本当にかっこ悪くて……
自分でも情けなくなってくる。