【短編】5回目のキス
「圭矢!?」
「うおっ」
いきなり叫ばれ、ガシッと顔を両手で掴まれた。
驚きと合った目線で恥ずかしくて、赤くなる顔。
目線を下にやり、俯こうとするのに力強く掴まれたまま。
仕方なく、雫の目を見た俺に、
「本当はすっごく嫌!
女優さんとの絡みだって、キスシーンだって。
泣いちゃうくらい嫌!
だけどね?
圭矢の仕事だもん。
仕方ないよね?
だから……我慢する。
ってか我慢してるの。
ただ……たまにでいいから、
こうして抱きしめて?
私が圭矢の1番なんだよ。って教えて?」
本当に?
ねぇ、本当?
嫌だったの?
泣いてたの?
我慢してたの?
それを全部……俺に隠してただけなの?
抱きしめて欲しいって思ってたの?
何だか、そんな想いをさせてた事が急に哀しくなった。
俺が仕事を続ける事で、雫は辛いんだよね?