【短編】5回目のキス



「あはっ、強いね……雫」



そう思ったら、今までの事が馬鹿らしく思えて。

自分の仕事への思いの弱さとか。
好き嫌いだけで選ぼうとした、あさはかさとか。


自分で自分が可笑しくて笑ってしまった。



俺は一体、雫の何を見ていたんだろう?

目の前で一緒に笑ってくれる雫のどこを見てたのかな?



これからは、もっともっと2人の時間を大切にして雫の中を見たいよ。



「じゃあ、2人で居る時は、ただの雫の彼氏だからね?」

「え……」




そう言って、軽く交わした唇。

また真っ赤になって焦る雫が可愛くて、つい



「可愛い」



ってクスクス笑ったら、もっと赤くなってしまった。



ただ唇が合わさっただけなのに、こんなに“好き”って気持ちが聞こえてくる。

でもね?

言葉で……ちゃんと雫の声で聞きたい。

そう思った俺は、やっぱり我儘かな?




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