【短編】5回目のキス
「ねぇ、雫。“好き”って言って?」
「えっ?!」
目を見開き、俺を見る。
そして逸らされた目線。
「駄目?」
ごめん、雫。
これも、わざと。
わかってるんだ。
恥ずかしくて言えないって。
だけどさ?
どうしても聞きたくて。
だから……許してね?
何度も何度も絡んだ視線。
そして、何度も何度も逸らされた。
だけど最後は、少し膨れて、
「……大好き」
なんて可愛く言ったのは、わざとかな?
ねぇ、雫……絶対今のは女優になれるよ。
でも駄目。
今の顔は俺だけにしか見せないでね?
他の誰にも絶対に見せないで……。
そう思って交わしたキスは、少し強引で。
苦しそうな雫を見て、俺って独占欲が強いのかも……って思った。