【短編】5回目のキス
服の裾を遠慮がちに持ち、ツンツンと引っ張る。

横目で見ると、不安そうな顔で俺を見つめる顔。



そんな顔しないでよ。



「圭矢ー……本当にごめんね?」



何度も何度も謝りながら、だんだんと小さくなる声。



「……別に怒ってないから、雫が謝る必要ないでしょ?」

「でも」

「……でも、何?」

「でも……もっと圭矢のぞばに居たいもん」



小さくついた溜息。


雫は、あの女優みたいに計算が出来るの?


どうしてそんなに可愛い事ばっかり言ってくれるんだろう?
どうして俺を困らせる事ばっかり言えるんだろう?



「そんな事ばっかり言ってると……またキスするよ?」



そう言った俺が見下ろした雫の顔が、見る見るうちに赤くなっていく。

それを見て、自分の言った事を思い出し後悔。



俺、何か変だよ……。




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