【短編】5回目のキス
「……私も」
「へ?」
真っ赤な顔で見つめ、泳ぐ目を俺に合わせた。
「私もしたい」
そう言って、また目を泳がす。
『私もしたい』って。
何が?
何を?
キョトンとした顔をする俺に、もう一度、
「私も圭矢と……キスしたいよ?」
上目使いで、ピンクに染めた頬で、潤んだ瞳で、光る唇で。
“キスしたい”
なんて言っちゃ駄目だよ、雫?
「もう……知らないからね?」
「へ? ……んん」
右側に居た雫の肩を右手で抱え込み、引き寄せキスをした。
絡まる舌が熱い。
少しの隙間から漏れる雫の甘い吐息が耳に残る。
それだけしか耳に入らない。
完全に麻痺したみたいな俺の脳。