【短編】5回目のキス
さっき置いた携帯電話の圭矢の最新曲が鳴り響いた。
慌てて携帯に手を伸ばす。高鳴る胸を押さえつつ、通話ボタンを押した。
「けっ圭矢?!」
《……声デカ》
「あっ、ごめん。どっどうしたの?」
声のトーンを落として、何故か正座してしまう。
《……明日の昼まで時間出来た》
「え? 突然どうしたの?」
何かあったのかな?
トラブルとか?
《……家いるから》
「えっ、じゃ行って……」
ップープープー……
耳に聞こえる機械音。
私の言葉を簡単に終わらせた。
元々、圭矢はラブラブしてくれるタイプじゃない。
デートだって……ほっとんどないんだよねぇ。
勿論、デートしたのだって、今みたいに売れる前じゃない時。
無理矢理誘って買い物……したくらい?
ほとんどが、家デート。
……これもデートって言っていいのか微妙だもんね。
ただ休みの日に、家に呼ばれて。
洗濯したり、掃除したりして、圭矢は寝てて……
って!
ただのお手伝いさんじゃんっ!