【短編】5回目のキス
でも馬鹿な私は原チャの鍵を取り、携帯を持つ。
玄関の鏡の前で、圭矢のCMのグロスを唇につけた。
圭矢から貰った“プレゼント”
『貰ったからやる』
って貰った“プレゼント”
例え圭矢が買ってくれたんじゃなくても。
例え圭矢が選んだんじゃなくても。
貰ったグロスを私にくれたのが……嬉しかったんだ。
たったそれだけの事が嬉しいなんて馬鹿みたいでしょ?
こうやって貰ったグロスをくれるのも。
こうやって時間が出来るとくれる電話も。
こうやって家の事をさしてくれるのも。
全部、私だけなんだって。
私は、特別なんだって。
それがね? すごく安心出来る時なんだよ?
圭矢の彼女なんだって思える時なの。
原チャを走らせ、圭矢のマンションに着いた。
セキュリティー番号を入力して中へ入る瞬間、いつも番号が変わってないか不安になってしまう。
今回は、もしかしたら変えてるかもしれない。
新しい番号を教えてくれないのかも知れない。
そんな些細な不安が、いつも私の胸の中にあるんだ。