届かなくてもあなたが好き
「では、整理番号50番までの方!橋田純の控え室へご案内致します!」
係員さんの誘導で、あたしを含む50人は先に会場内へと足を踏み入れた。
控え室からきゃあきゃあと黄色い声が聞こえる。
「リラックス!あんた何も喋れなくなるんだから、緊張しちゃダメよ!」
さっき、りっちゃんに言われたことを思い出し、あたしは大きく深呼吸した。
みんな…可愛いな。
メイクもバッチリ。綺麗な髪も巻いたりして、すごいおしゃれしてる。
服に不満はないけど、髪は寝癖を直したぐらいだし、メイクなんてやってない。色つきリップをぬってるだけ。
大好きな人に会うっていうのに……。もしかしてあたし、女の子終わってますか?
でも、いい!
純君に好きになってもらいたいわけじゃないもん。
あたしはただ、ファンの一人として応援したいだけなんだ。
「よし!」
あたしの前の人が、うれしそうな笑顔を浮かべて控え室から出てきた。
「50番の人、お入り下さい」