エルタニン伝奇
神託の後半、『血と闇の中で、産声を上げよ』。
それを、サダクビアは口にした。
神託など、知らぬはずなのに。
この姫にも、同じ神託が降りたのか。
それともただの偶然か。
どちらにしろ、ラスの心は決まった。
宝剣を正眼に構え、サダクビアを睨む。
「お前は、思い違いをしている。確かに俺は、神官どもが嫌いだが、奴らが全くいなくなったら国政が成り立たないということも、わかっている。権力を削ぐことには大賛成だが、ある程度の知恵は必要なんだよ。奴らだって、馬鹿じゃないんだ。国を回すには、それなりの頭がいる。俺を傀儡にしたいという腐った奴もいるが、全員が全員、そうではない。このサダルスウドが、証明している」
思いがけないラスの言葉に、思わずサダルスウドはラスを見つめた。
賢い王だとは思っていたが、数少ない良識ある神官のことまで理解しているとは、思っていなかった。
むしろ、ラスなら完全に神官を政治の世界から退かせて、独裁体制を強いても、やっていけるのではないかと思うのだ。
それをしないのは、愚かでないからだ。
嫌ってはいても、神官の意見も取り入れるべきものは取り入れている。
そのようなことを理解しないで、権力のみを欲する最高神官らのほうが、よっぽど愚かといえる。
「俺は、自分の意見が絶対正しいなどとは、思っていない。人の意見も取り入れなければ、俺のような若輩者は、国を正常に導けん。そのためには、側近はもちろん、神官だって必要だ。お前はそういうことが、わかっていない」
『兄上・・・・・・! 何ということをっ・・・・・・』
それを、サダクビアは口にした。
神託など、知らぬはずなのに。
この姫にも、同じ神託が降りたのか。
それともただの偶然か。
どちらにしろ、ラスの心は決まった。
宝剣を正眼に構え、サダクビアを睨む。
「お前は、思い違いをしている。確かに俺は、神官どもが嫌いだが、奴らが全くいなくなったら国政が成り立たないということも、わかっている。権力を削ぐことには大賛成だが、ある程度の知恵は必要なんだよ。奴らだって、馬鹿じゃないんだ。国を回すには、それなりの頭がいる。俺を傀儡にしたいという腐った奴もいるが、全員が全員、そうではない。このサダルスウドが、証明している」
思いがけないラスの言葉に、思わずサダルスウドはラスを見つめた。
賢い王だとは思っていたが、数少ない良識ある神官のことまで理解しているとは、思っていなかった。
むしろ、ラスなら完全に神官を政治の世界から退かせて、独裁体制を強いても、やっていけるのではないかと思うのだ。
それをしないのは、愚かでないからだ。
嫌ってはいても、神官の意見も取り入れるべきものは取り入れている。
そのようなことを理解しないで、権力のみを欲する最高神官らのほうが、よっぽど愚かといえる。
「俺は、自分の意見が絶対正しいなどとは、思っていない。人の意見も取り入れなければ、俺のような若輩者は、国を正常に導けん。そのためには、側近はもちろん、神官だって必要だ。お前はそういうことが、わかっていない」
『兄上・・・・・・! 何ということをっ・・・・・・』