エルタニン伝奇
「可哀相であったな。すっかり憎悪に冒されてしまって。本来、コアトルの血もヒトと同じ、赤いものじゃ。ここまで冒されながらも、サダクビア様を抑え込んでいたのじゃな・・・・・・」
呟きながら、サダルスウドは集めた碧い石を、サダクビアに降りかけた。
「サダルスウド様・・・・・・それは・・・・・・」
サダルスウドの手元に視線を落とし、メリクは呟くように言った。
澄んだ碧い石は、宝剣にあったスターサファイアだ。
よく見ると、ぱらぱらとサダクビアにかけられるものの中には、薄い色のものもある。
「ルッカサ女王は、なかなか良いものをくださったようじゃな」
宝剣のスターサファイアだけではなく、ルッカサ女王がラスに贈った守り石も、粉々に砕けたようだ。
守り石が砕けたということと、宝剣が折れたということに、メリクの身体の震えは大きくなる。
でも、と、不吉な考えを振り払うように、メリクは顔を上げて、サダルスウドの向こうに見える、コアトルを見た。
コアトルは生きている。
ラスもきっと、生きているはずだ。
メリクは足を踏み出し、コアトルに近づいた。
闇に浮かび上がる大きな影のすぐ近くで立ち止まり、そっと冷たい蛇体に触れる。
コアトルが、頭をメリクに向け、小さくぎゃ、と鳴いた。
「コアトル、ラス様・・・・・・お兄様は?」
メリクを見るコアトルは、紛れもないラスのコアトルだ。
ほんのちょっとの間だったはずなのに、酷く懐かしく思われ、メリクの目には再び涙が浮かぶ。
コアトルが今ここにいるというだけで、ラスの生存が確認できたことになり、メリクの緊張の糸が切れそうになる。
呟きながら、サダルスウドは集めた碧い石を、サダクビアに降りかけた。
「サダルスウド様・・・・・・それは・・・・・・」
サダルスウドの手元に視線を落とし、メリクは呟くように言った。
澄んだ碧い石は、宝剣にあったスターサファイアだ。
よく見ると、ぱらぱらとサダクビアにかけられるものの中には、薄い色のものもある。
「ルッカサ女王は、なかなか良いものをくださったようじゃな」
宝剣のスターサファイアだけではなく、ルッカサ女王がラスに贈った守り石も、粉々に砕けたようだ。
守り石が砕けたということと、宝剣が折れたということに、メリクの身体の震えは大きくなる。
でも、と、不吉な考えを振り払うように、メリクは顔を上げて、サダルスウドの向こうに見える、コアトルを見た。
コアトルは生きている。
ラスもきっと、生きているはずだ。
メリクは足を踏み出し、コアトルに近づいた。
闇に浮かび上がる大きな影のすぐ近くで立ち止まり、そっと冷たい蛇体に触れる。
コアトルが、頭をメリクに向け、小さくぎゃ、と鳴いた。
「コアトル、ラス様・・・・・・お兄様は?」
メリクを見るコアトルは、紛れもないラスのコアトルだ。
ほんのちょっとの間だったはずなのに、酷く懐かしく思われ、メリクの目には再び涙が浮かぶ。
コアトルが今ここにいるというだけで、ラスの生存が確認できたことになり、メリクの緊張の糸が切れそうになる。