エルタニン伝奇
「ミルバは歌に惹かれて、やってくるんです。綺麗でしょう?」
沈黙に耐えられないというように、メリクは笑顔を作って言葉を続けた。
「ルッカサ女王に、謁見するのでしょう? これ、きっとお喜びになりますわ」
五枚ほどのミルバの鱗を、がしゃがしゃとラスに押しつける。
が、僅かに刻まれたラスの眉間の皺に、メリクはびく、と身体を強張らせた。
「あ、で、出過ぎたことでしたかしら・・・・・・」
「お前、寒くないのか?」
調子に乗ってしまったと後悔したメリクの言葉に被る勢いで、ラスが全然関係ないことを聞いた。
メリクはしばらく、ぽかんとラスを見つめる。
押しつけられた鱗に落とされていたラスの視線がメリクに移り、メリクは慌てて自分の身体に視線を落とした。
「あ、えっと。そ、そう言われてみれば、薄着かもしれませんけど。でも、大丈夫です」
意味もなくガッツポーズをするメリクから、あっさりと視線を切り、ラスは踵を返した。
コアトルが興味を示したように、ラスの手にある鱗を覗き込む。
「何だ? 欲しいのか?」
言いながらコアトルの顎を撫でるラスを、メリクは腕を己の両肩辺りに上げたまま、ぼんやりと見つめた。
コアトルに対する態度があまりにも優しげで、ろくに口も聞いてもらえないメリクは、何ともいえない気持ちになる。
数歩歩いて、ラスは立ち止まった。
振り返りざま、ひょいと何かを投げる。
ラスの背中を見送っていたメリクは、慌ててそれを両手で受け止めた。
手の中に落ちてきたのは、一枚の鱗。
メリクが顔を上げたときには、すでにラスは、船室へと姿を消していた。
沈黙に耐えられないというように、メリクは笑顔を作って言葉を続けた。
「ルッカサ女王に、謁見するのでしょう? これ、きっとお喜びになりますわ」
五枚ほどのミルバの鱗を、がしゃがしゃとラスに押しつける。
が、僅かに刻まれたラスの眉間の皺に、メリクはびく、と身体を強張らせた。
「あ、で、出過ぎたことでしたかしら・・・・・・」
「お前、寒くないのか?」
調子に乗ってしまったと後悔したメリクの言葉に被る勢いで、ラスが全然関係ないことを聞いた。
メリクはしばらく、ぽかんとラスを見つめる。
押しつけられた鱗に落とされていたラスの視線がメリクに移り、メリクは慌てて自分の身体に視線を落とした。
「あ、えっと。そ、そう言われてみれば、薄着かもしれませんけど。でも、大丈夫です」
意味もなくガッツポーズをするメリクから、あっさりと視線を切り、ラスは踵を返した。
コアトルが興味を示したように、ラスの手にある鱗を覗き込む。
「何だ? 欲しいのか?」
言いながらコアトルの顎を撫でるラスを、メリクは腕を己の両肩辺りに上げたまま、ぼんやりと見つめた。
コアトルに対する態度があまりにも優しげで、ろくに口も聞いてもらえないメリクは、何ともいえない気持ちになる。
数歩歩いて、ラスは立ち止まった。
振り返りざま、ひょいと何かを投げる。
ラスの背中を見送っていたメリクは、慌ててそれを両手で受け止めた。
手の中に落ちてきたのは、一枚の鱗。
メリクが顔を上げたときには、すでにラスは、船室へと姿を消していた。