エルタニン伝奇
思った通り、民間に伝わるものは、大陸に伝わるような、当たり障りのないものだった。
だが事実は、王家の秘密でもあり、この国で力を持つ、神殿の禁忌でもある。
そう簡単に、目に触れるわけはない。
きっと厳重な管理の下、保管されているに違いない。
図書館の奥にある、禁書の保管部屋の入り口も、なかなか見つけられなかった。
ライナスは注意深く、かび臭い本棚を調べていった。
どの本も相当古く、中には触れると崩れてしまいそうなほどの、ぼろぼろの本もある。
すでに日は西に傾いている。
灯りをつけるわけにはいかないので、暗くなるまでに調べなければならない。
焼けて読みにくい背表紙を、懸命に読み取りながら、ライナスは本棚を移動していった。
その本を見つけたのは、かなり経ってからだった。
神殿関係の本の間に、ひっそりと挟まっていた、手書きの本。
冊子ともとれるような、粗末なものだった。
『アル・スハイル・アル・ムリブ』
‘誓い合った星’という意味の、その古い本を、ライナスはそっと引き出した。
窓辺に寄り、ページを繰る。
著者は『サダルスウド』。
この名は、神殿の最高位である者が代々名乗るので、これだけでは誰なのかわからない。
公式のものには、『第○代 サダルスウド』などと書かれるものだが、禁書である上に、あえてそこまで書いていないこの本に、ライナスは惹かれた。
手書き故、信憑性は、そうないかもしれない。
が、公にできない、それなりの理由があるはずだ。
ライナスは今一度、人気(ひとけ)のないことを確かめると、その軽く三百年は経っているであろう、古めかしい本を読み始めた。
だが事実は、王家の秘密でもあり、この国で力を持つ、神殿の禁忌でもある。
そう簡単に、目に触れるわけはない。
きっと厳重な管理の下、保管されているに違いない。
図書館の奥にある、禁書の保管部屋の入り口も、なかなか見つけられなかった。
ライナスは注意深く、かび臭い本棚を調べていった。
どの本も相当古く、中には触れると崩れてしまいそうなほどの、ぼろぼろの本もある。
すでに日は西に傾いている。
灯りをつけるわけにはいかないので、暗くなるまでに調べなければならない。
焼けて読みにくい背表紙を、懸命に読み取りながら、ライナスは本棚を移動していった。
その本を見つけたのは、かなり経ってからだった。
神殿関係の本の間に、ひっそりと挟まっていた、手書きの本。
冊子ともとれるような、粗末なものだった。
『アル・スハイル・アル・ムリブ』
‘誓い合った星’という意味の、その古い本を、ライナスはそっと引き出した。
窓辺に寄り、ページを繰る。
著者は『サダルスウド』。
この名は、神殿の最高位である者が代々名乗るので、これだけでは誰なのかわからない。
公式のものには、『第○代 サダルスウド』などと書かれるものだが、禁書である上に、あえてそこまで書いていないこの本に、ライナスは惹かれた。
手書き故、信憑性は、そうないかもしれない。
が、公にできない、それなりの理由があるはずだ。
ライナスは今一度、人気(ひとけ)のないことを確かめると、その軽く三百年は経っているであろう、古めかしい本を読み始めた。