エルタニン伝奇
第五章
翌る日は、当然ながら朝から今後のことについての会議で、部屋に缶詰状態である。
近衛隊長や重臣などは、強固に撤退を主張した。
ルッカサ女王までが、イヴァン行きを反対する。

「一国の王に、このような無礼を働くような国に、援軍を出す必要がありましょうか」

憤慨する女王の意見も、もっともである。

昼を過ぎた頃に、イヴァン皇帝より書簡が届く。

援軍要請は、確かに王都から出したこと。
だがガストン伯の今回の企みは、王都はあずかり知らぬこと。
よって、援軍要請を取り下げる気はないこと。

「なめられたもんだな」

机に書簡を投げ出し、ラスは手を組んだ。
ラスはエルタニン史上、最年少の王である。
故に、当然あらゆる経験が浅い。

成人になるまでの長きに渡って神官らの傀儡で、国政に参加できなかったことが伝えられているのだろう。
いまだにラスは、ただのお飾りの王だと思っている国もある。
イヴァンもその一つのようだ。

実際は、早くからラスは帝王学を学び、王座に就いてからは、神官から今までの権力を奪う方向で、自ら王としての力を発揮してきたのだが。

「まぁ、愚王と思われていたほうが、やりやすいこともありましょうが」

重臣らは、ラスの王としての資質を認めている。
国に残っている者も同様。

認めていないのは、神官らだけなのだ。
彼らは認めないというより、認めてしまえば、国政における自分たちの力を再び取り戻すことができなくなることを恐れているのだ。
一度甘い汁を吸った者は、元の状態には戻りたくないものだ。
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