エルタニン伝奇
「ラス様は、幼い頃より‘呪いの王子’と言われてきましたな」

サダルスウドの言葉に、ラスの目が鋭くなる。

「その理由は、わかっておいでですか?」

「父上が、生涯独身であるはずの巫女を娶ったため。さらには、父上と母上が、俺が産まれた後、相次いでお亡くなりになったからだろう」

素っ気なく答えるラスに、サダルスウドが小さく頷く。

「その通り。でも、あなたが呪いの王子だと・・・・・・いえ、呪いの御子だと言われるのは、もっと決定的な事柄があったからなのです。本来なら、あり得ないことが起こったのですよ」

ラスの目が、僅かに大きくなる。
サダルスウドは、少しの間逡巡し、やがて口を開く。

「・・・・・・コアトルが、二体現れました」

「なんだと?」

驚くラスを、サダルスウドは軽く手を挙げて制止する。

「それについては、詳しいことはわかりかねます。いえ、考えられるきっかけというものに関しては、先程申し上げたように、今はまだ言えませぬが、ある程度は」

「わからぬことを言うな!」

「とにかく!」

食って掛かるラスを強制的に黙らせ、サダルスウドは声を上げた。
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