エルタニン伝奇
「サダルメリクが、語ったのですか。そのようなこと、勇気がいったでしょうに。その通りです。サダルメリクは、北の海岸をうろうろしているところを、私が見つけました。五、六年前ですか。そのときより私の心には、ある予感がありました。あの者には、トゥバンの印はありませんでしたが、きっと現王・・・・・・あなた様の、お側に上がることになろうと。そう思い、私の願いも込めて、‘王の幸運’という名を与えました」
「あいつが、俺の幸運となるのか?」
何の役にも立たない、のろまでドジな小娘でしかないのに。
ラスは思わず、笑い出しそうになる。
「そうなれば良い、と思いますが。しかし、成り行きを見る限り、あまり良い流れとは思えませぬ。ですが、全ては起こるべくして起こったのだと。ラス様が即位されたとき、久しく私に神託が降りました。‘サダルメリクを、王に捧げよ’と。最高神官らが、己の娘や親戚筋から巫女としてラス様に遣わす者を物色しておりましたが、私はおのが役目を果たすべく、あえて再び神官らの非難の矢面に立つことにしました」
「巫女でもない者を、トゥバンが選んだか。しかし残念ながら、あいつは今のところ、何の役にも立っていないぞ」
「そうでしょうか?」
何か含んだ言い方に、ラスはサダルスウドを見た。
サダルスウドは、ラスが今まで向けられたことのないような、優しい瞳で見つめ返す。
「あいつが、俺の幸運となるのか?」
何の役にも立たない、のろまでドジな小娘でしかないのに。
ラスは思わず、笑い出しそうになる。
「そうなれば良い、と思いますが。しかし、成り行きを見る限り、あまり良い流れとは思えませぬ。ですが、全ては起こるべくして起こったのだと。ラス様が即位されたとき、久しく私に神託が降りました。‘サダルメリクを、王に捧げよ’と。最高神官らが、己の娘や親戚筋から巫女としてラス様に遣わす者を物色しておりましたが、私はおのが役目を果たすべく、あえて再び神官らの非難の矢面に立つことにしました」
「巫女でもない者を、トゥバンが選んだか。しかし残念ながら、あいつは今のところ、何の役にも立っていないぞ」
「そうでしょうか?」
何か含んだ言い方に、ラスはサダルスウドを見た。
サダルスウドは、ラスが今まで向けられたことのないような、優しい瞳で見つめ返す。