エルタニン伝奇
「・・・・・・イヴァン軍探索隊長、アンドレイ・スターリにございます」
「こちらは我がエルタニン国王、ラス・アルハゲ陛下である。貴国の要請を受け、我が国は恐れ多くも国王自らがご出陣なされた」
近衛隊長が、有り難く思えと言わんばかりに、高圧的に言い放った。
アンドレイはその言葉と、ラスの刺すような視線に、息を呑む。
控えていたイヴァン兵らも、ばらばらと膝を折る。
その段になって初めて、ラスはコアトルから降り立った。
「出迎えご苦労。だが、随分礼を欠いた者どもだな。イヴァンの者というのは、そういう者ばかりなのか?」
腕を組み、足元のアンドレイを冷たく見下ろす。
ラスの言うとおり、アンドレイらはラスを見くびっていた。
エルタニン軍が見えた時点で、大陸にはいないコアトルに気づいていたので、王がいることにも気づいていた。
が、全体の人数が少なすぎる。
やはり、所詮若輩者の王。
動かせる兵も、知れたものか、と思ったのだ。
それが、礼を失する態度になって出てしまった。
「失礼ながら、援軍と言うにはあまりに兵の規模が小さすぎるようにお見受けしましたので」
アンドレイは、自分では臆することなく意見したつもりだった。
だが、若干声が震えてしまう。
こんな若造に恐れを感じるなど、と悔しく思い、アンドレイは無理矢理顔を上げた。
それが、いけなかった。
ラスと目が合った瞬間、冷水を浴びたような寒気が襲う。
まさに、濃紺の瞳に『射抜かれた』という表現が正しい。
アンドレイは、ひゅっと小さく息を吸い込んだきり、動きすらなくしてしまった。
「・・・・・・国王暗殺未遂という大事件を起こしておいて、知らぬ存ぜぬを通すような、貴国の言うことを聞いてやるだけでも、随分有り難いと思わぬか? それとも、己の身内のしでかしたことの始末もつけられぬ閣下なら、臣下が礼儀を知らぬのも道理か」
「こちらは我がエルタニン国王、ラス・アルハゲ陛下である。貴国の要請を受け、我が国は恐れ多くも国王自らがご出陣なされた」
近衛隊長が、有り難く思えと言わんばかりに、高圧的に言い放った。
アンドレイはその言葉と、ラスの刺すような視線に、息を呑む。
控えていたイヴァン兵らも、ばらばらと膝を折る。
その段になって初めて、ラスはコアトルから降り立った。
「出迎えご苦労。だが、随分礼を欠いた者どもだな。イヴァンの者というのは、そういう者ばかりなのか?」
腕を組み、足元のアンドレイを冷たく見下ろす。
ラスの言うとおり、アンドレイらはラスを見くびっていた。
エルタニン軍が見えた時点で、大陸にはいないコアトルに気づいていたので、王がいることにも気づいていた。
が、全体の人数が少なすぎる。
やはり、所詮若輩者の王。
動かせる兵も、知れたものか、と思ったのだ。
それが、礼を失する態度になって出てしまった。
「失礼ながら、援軍と言うにはあまりに兵の規模が小さすぎるようにお見受けしましたので」
アンドレイは、自分では臆することなく意見したつもりだった。
だが、若干声が震えてしまう。
こんな若造に恐れを感じるなど、と悔しく思い、アンドレイは無理矢理顔を上げた。
それが、いけなかった。
ラスと目が合った瞬間、冷水を浴びたような寒気が襲う。
まさに、濃紺の瞳に『射抜かれた』という表現が正しい。
アンドレイは、ひゅっと小さく息を吸い込んだきり、動きすらなくしてしまった。
「・・・・・・国王暗殺未遂という大事件を起こしておいて、知らぬ存ぜぬを通すような、貴国の言うことを聞いてやるだけでも、随分有り難いと思わぬか? それとも、己の身内のしでかしたことの始末もつけられぬ閣下なら、臣下が礼儀を知らぬのも道理か」