エルタニン伝奇
「この状況も、そう長くは続かんだろうしなぁ。後続のエルタニン軍が来るまで、このままってわけにはいかんだろう」

どこかのんびりと言い、ラスはサダルスウドを少し遠くに移動させた。
どう見ても兵士ではないサダルスウドは、狙い撃ちにされる危険がある。

「王も、おさがりください」

近衛隊長が抜刀し、ラスの前に来る。

「馬鹿言え。俺の存在は、コアトルでバレバレだろ。さがったところで、俺を狙うに変わりはない」

「そうは仰せられても! このようなことで、王を失うわけには参りませぬ!」

「ま、そうだな」

血相を変える隊長とは反対に、どこまでものんびりと言うラスは、前に座るメリクをひょいと持ち上げると、くるりと反転させ、自分のほうを向かせて再び座らせた。

「お前の面倒までは見られん。自分でしっかり掴まってろ」

低く言い、ラスは腰の宝剣を抜き放つ。
察したメリクがラスに抱きついた途端、ラスはコアトルを急降下させた。

いきなりの行動に、誰もが動きをなくす。
番えた矢を放つこともできず、目を見開くイヴァン兵の眼前に、コアトルの銀色の鱗が迫ったかと思うと、鱗と同じ色の一閃が、一人の兵士の首を飛ばした。

イヴァン兵はいきなりのラスの攻撃に、思い切り形勢を崩された。
その隙に、ラスはコアトルを巧みに操り、次々兵士を屠っていく。
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