エルタニン伝奇
「隊長! 頃合いを見て退けよ!」
ラスは無事を伝えるため、大声で叫んだ。
隊長が、安心したように頷き、剣を構え直す。
だが、隊長のほうもそれなりの傷を負っているようだ。
最早探索隊は数えるほどしか残っていないし、このままでは隊長もアンドレイも、力尽きるだろう。
王として、部下を見捨てても己が生きなければならないのはわかっている。
故に、チャンスは一回しか与えられない。
「コアトル、頼む」
ぽん、とコアトルを軽く叩き、メリクを抱き寄せる。
そして、手綱を握りしめると前屈みになり、できるだけコアトルに密着する。
コアトルは確認するように、ぎゃ、と一声鳴くと、物凄い勢いで地上で戦う兵士ら目掛けて突っ込んでいった。
その速度は、初めの奇襲よりも、遙かに速い。
今は斬り合うつもりはないからだ。
まさに目にも留まらぬ勢いで兵士らに迫ったコアトルは、そのまま容赦なく硬い鱗で驚く兵をなぎ倒していく。
これだけでも、かなりの兵を屠れるはずだ。
難点は、敵味方を区別して攻撃できない点だ。
だが、これだけ味方の数が少ない場合は、味方に当たる確率のほうが、遙かに低い。
「退け!」
疾風の如く駆け抜けたラスの声に、隊長は素早く傍にいたヴォルキーに飛び乗った。
アンドレイもチーリェフを走らせ、残った兵を回収しつつ、戦線を離脱した。
「固まるな! できるだけばらけて、お前らは近衛隊と合流しろ! いいな!」
言い残し、ラスは一気にサダルスウドの元へ戻ると、自分は氷の美姫の元へと急いだ。
ラスは無事を伝えるため、大声で叫んだ。
隊長が、安心したように頷き、剣を構え直す。
だが、隊長のほうもそれなりの傷を負っているようだ。
最早探索隊は数えるほどしか残っていないし、このままでは隊長もアンドレイも、力尽きるだろう。
王として、部下を見捨てても己が生きなければならないのはわかっている。
故に、チャンスは一回しか与えられない。
「コアトル、頼む」
ぽん、とコアトルを軽く叩き、メリクを抱き寄せる。
そして、手綱を握りしめると前屈みになり、できるだけコアトルに密着する。
コアトルは確認するように、ぎゃ、と一声鳴くと、物凄い勢いで地上で戦う兵士ら目掛けて突っ込んでいった。
その速度は、初めの奇襲よりも、遙かに速い。
今は斬り合うつもりはないからだ。
まさに目にも留まらぬ勢いで兵士らに迫ったコアトルは、そのまま容赦なく硬い鱗で驚く兵をなぎ倒していく。
これだけでも、かなりの兵を屠れるはずだ。
難点は、敵味方を区別して攻撃できない点だ。
だが、これだけ味方の数が少ない場合は、味方に当たる確率のほうが、遙かに低い。
「退け!」
疾風の如く駆け抜けたラスの声に、隊長は素早く傍にいたヴォルキーに飛び乗った。
アンドレイもチーリェフを走らせ、残った兵を回収しつつ、戦線を離脱した。
「固まるな! できるだけばらけて、お前らは近衛隊と合流しろ! いいな!」
言い残し、ラスは一気にサダルスウドの元へ戻ると、自分は氷の美姫の元へと急いだ。