エルタニン伝奇
第七章
生暖かいものが、頬をくすぐる。
ぎゃ、ぎゃ、という聞き慣れた鳴き声に、ラスはゆるゆると目を開けた。
すぐ目の前に、コアトルの舌が、ちろちろと揺れている。
顔を上げると、コアトルは安心したように頭を擦りつけてきた。
「うっつぅ・・・・・・」
起き上がろうと力を入れたのが右腕だったため、走った衝撃に顔をしかめたラスは、ぐいぐいと押しつけられるコアトルの頭に掴まり、何とか身体を起こした。
「ここは・・・・・・」
先程までの吹雪はすっかり止み、目の前の視界は開けている。
だがそこは、見たこともないような土地だった。
辺りは一面氷に覆われ、そこここに骨が転がっている。
周りが氷なのに、転がっているのが骨ということは、端(はな)から骨の状態で放置されたということだ。
「氷・・・・・・」
辺り一面の氷ということは、ここのどこかに、きっと氷の美姫がいるはずだ。
ラスはきょろきょろと、辺りを見回した。
少し先に、サダルスウドが倒れている。
ラスはコアトルに掴まり、サダルスウドに近づいた。
「おい、大丈夫か」
口元に手を当てると、息を感じた。
その上で、ぱん、と頬を叩くと、サダルスウドは眉間に皺を刻み、小さく呻き声を上げながら目を開けた。
「ああ・・・・・・。ご無事でしたか」
「嵐に巻き込まれたにしては、どこも怪我はしていないようだ。お前も、外傷はないようだな」
サダルスウドは上体を起こし、ふぅ、と息をついた。
「・・・・・・氷の美姫に、呼ばれたのでしょうな」
呟き、先にある氷の裂け目を見た。
ぎゃ、ぎゃ、という聞き慣れた鳴き声に、ラスはゆるゆると目を開けた。
すぐ目の前に、コアトルの舌が、ちろちろと揺れている。
顔を上げると、コアトルは安心したように頭を擦りつけてきた。
「うっつぅ・・・・・・」
起き上がろうと力を入れたのが右腕だったため、走った衝撃に顔をしかめたラスは、ぐいぐいと押しつけられるコアトルの頭に掴まり、何とか身体を起こした。
「ここは・・・・・・」
先程までの吹雪はすっかり止み、目の前の視界は開けている。
だがそこは、見たこともないような土地だった。
辺りは一面氷に覆われ、そこここに骨が転がっている。
周りが氷なのに、転がっているのが骨ということは、端(はな)から骨の状態で放置されたということだ。
「氷・・・・・・」
辺り一面の氷ということは、ここのどこかに、きっと氷の美姫がいるはずだ。
ラスはきょろきょろと、辺りを見回した。
少し先に、サダルスウドが倒れている。
ラスはコアトルに掴まり、サダルスウドに近づいた。
「おい、大丈夫か」
口元に手を当てると、息を感じた。
その上で、ぱん、と頬を叩くと、サダルスウドは眉間に皺を刻み、小さく呻き声を上げながら目を開けた。
「ああ・・・・・・。ご無事でしたか」
「嵐に巻き込まれたにしては、どこも怪我はしていないようだ。お前も、外傷はないようだな」
サダルスウドは上体を起こし、ふぅ、と息をついた。
「・・・・・・氷の美姫に、呼ばれたのでしょうな」
呟き、先にある氷の裂け目を見た。