エルタニン伝奇
「な、何だよ。サダルスウド、これはどういうことなんだ」

メリクを抱き留め、ラスは傍らに立つサダルスウドを見上げた。
サダルスウドもこの状態に、青くなって小さく震えている。
が、目は氷の中の姫君に据えたまま、震える声で答えた。

「何とも、恐ろしいことです・・・・・・。姫君が、成長していることも。いえ、予測はできましたが。尋常ではない力を有しておりましたから」

やはり、サダルスウドは全て知っているのだ。
ラスの視線を受け、サダルスウドは続ける。

「ラス様。この姫君は、あなた様の妹君です」

「何だと?!」

衝撃の事実に、ラスは怒鳴った。
己に兄弟などいない。

「ご存じないのも、無理はありません。あなた様は、双子でいらっしゃった。以前、コアトルが二体現れたと言いましたね。これで、おわかりでしょう」

「わかるか! 例え双子であろうと、世継ぎは一人だ! 何故コアトルが二体も現れるのだ!」

サダルスウドは、静かに首を振った。

「仰る通り。あなた様は、全てが規格外・・・・・・。巫女を母に持ったことも、双子でいらっしゃったことも、コアトルが二体現れたことも。そして、戴冠の折、ご自身に神託が降りたことも」
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