エルタニン伝奇
目の前の氷の美姫を見上げ、サダルスウドは目を細める。
顔は相変わらず青ざめているが、どこか懐かしそうな表情でもある。
「しかも、あなた様と同時に生まれ落ちた姫君は、確かにエルタニンの両親から産まれたにも関わらず、雪のように白い肌に、髪にも色はありませんでした」
白い肌に、色のない髪・・・・・・。
ラスは腕の中のメリクを見た。
メリクはまだ、眉間に深く皺を刻んで、苦しそうに頭を押さえている。
「私はすぐに、一目で異形の者と知れる姫君のほうを、封じることにしたのです。王妃様は産後の肥立ちもよろしくなく、意識も曖昧でしたから、先代王の目だけを気にしておれば、赤子を連れ去ることは、そう難しいことではありませんでした。忠誠を誓った王を苦しめないために、王にもお知らせすることなく、言うなれば私の独断で決めたことです。巫女を娶ったことといい、身籠もられた王妃様の体調が、見る間に衰えていったことといい、まさに‘呪い’としての風評が酷くなっておりましたので、私には異形の姫君が、その最たるものに見えたのです」
「・・・・・・それで、姫を・・・・・・俺の妹を、氷に封じたのか」
「目に見える呪いほど、怖いものはないでしょう。姫をどこかにやってしまうことで、少しでも悪しき噂を薄めることができるのなら、私はあまり、躊躇(ためら)いません。それに・・・・・・」
一度身震いし、サダルスウドは恐ろしいものを見るように、氷の柱を見つめた。
顔は相変わらず青ざめているが、どこか懐かしそうな表情でもある。
「しかも、あなた様と同時に生まれ落ちた姫君は、確かにエルタニンの両親から産まれたにも関わらず、雪のように白い肌に、髪にも色はありませんでした」
白い肌に、色のない髪・・・・・・。
ラスは腕の中のメリクを見た。
メリクはまだ、眉間に深く皺を刻んで、苦しそうに頭を押さえている。
「私はすぐに、一目で異形の者と知れる姫君のほうを、封じることにしたのです。王妃様は産後の肥立ちもよろしくなく、意識も曖昧でしたから、先代王の目だけを気にしておれば、赤子を連れ去ることは、そう難しいことではありませんでした。忠誠を誓った王を苦しめないために、王にもお知らせすることなく、言うなれば私の独断で決めたことです。巫女を娶ったことといい、身籠もられた王妃様の体調が、見る間に衰えていったことといい、まさに‘呪い’としての風評が酷くなっておりましたので、私には異形の姫君が、その最たるものに見えたのです」
「・・・・・・それで、姫を・・・・・・俺の妹を、氷に封じたのか」
「目に見える呪いほど、怖いものはないでしょう。姫をどこかにやってしまうことで、少しでも悪しき噂を薄めることができるのなら、私はあまり、躊躇(ためら)いません。それに・・・・・・」
一度身震いし、サダルスウドは恐ろしいものを見るように、氷の柱を見つめた。