いけない保健教師〜気になる不良転校生〜
「痛っ」


反射的に“ゴリラ”の手を両手で掴んだ春田だが、歯を食いしばって目を閉じると、だらりと手を下ろしてしまった。


(私さえ我慢すれば、徹也を守れるんだわ…)


「ほお…、聞き分けがいいな。じゃあ、いただくとするか…」


“ゴリラ”は太い指で春田の顎を持ち上げ、臭い息で春田の顔に顔を近付けていった。その時…


「俺の美沙子に触るんじゃねえ!」


徹也が後ろから“ゴリラ”の腕をグイッと引っ張っていた。


「テメエ、おねんねしてたんじゃねえのかよ? じゃまだから、今度こそおねんねしてな!」


そう言うなり、“ゴリラ”の大きな拳(こぶし)が、ブンッと空を切る音がした。


「キャーッ」


と叫んだ春田だが、もんどり打って床に尻餅をついたのは、徹也ではなく“ゴリラ”の方だった。
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