Escape from the DEAD
誰もいない道路の真ん中。

芹は立ち止まって振り返る。

…誰も追ってこない。

追ってくる筈もない。

何も告げずに出てきたのだから。

だが、引き止めに来てくれたら…。

そんな甘い気持ちが内心なかったかと言えば嘘になる。

淡い期待はいとも容易く砕け、芹は一人アスファルトの上に立っている。

…随分と勝手な真似をした。

正直嫌な女だと思う。

芹は賭けに出たのだ。

要が追いかけて来てくれたら、屋敷に戻ろうと思った。

行くなと言ってくれたら、ぬけぬけと屋敷に帰っていくつもりでいたのだ。

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