Escape from the DEAD
結論から言えば、群がっているのは人間ではなくゾンビ達だった。

ゾンビ達が、一人の人間に…いや、人間だったものに殺到している。

たった一人の人間の体を、寄ってたかって食んでいるのだ。

眼球を抉り出し、肉を食い千切り、喉笛を噛み切り、腸を引きずり出し、臓物を頬張る。

溢れ出る鮮血を浴びながら瞳孔の開き切った眼を引ん剥き、生きたままの人間の肉を咀嚼する。

まともな精神の者が目の当たりにしたならば、たちどころにして発狂しかねない凄絶な光景。

禁断の行為、人の姿をしたものが人間の肉を食べる、呪われし人肉嗜食。

その地獄絵図さながらのカニバリズムを大写しに見る事になってしまった芹は。

「いっ、いやぁあぁぁあぁぁあぁあぁぁっ!!」

当然の如く悲鳴を上げる。

その悲鳴に、亡者どもが気づかない筈はない。

…ギョロリと。

スコープ越しに、ゾンビ達が振り向いて芹の方を凝視したのが見えた。

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