Escape from the DEAD
しかしそれは芹のものではない。

それら全てが、自動小銃のフルオート射撃を浴びて射殺されたゾンビのもの。

組み敷かれて地面に仰向けに倒れた芹は、まともに死肉と血液を浴びる羽目になったのだ。

それでも贅沢は言えまい。

もし助けが来なかったら、芹はあのままゾンビ達に体中を噛まれ、柔肉を食い千切られ、咀嚼されていたのだから。

…いまだ冷めやらぬ恐怖と戦慄。

自覚せぬうちに失禁したかもしれないが、こうも身につけている制服がゾンビの血と体液でびしょ濡れになってしまっては、確認する術もない。

凄惨な姿となったまま、芹は上体を起こし。

「大丈夫か、噛まれていないか」

89式5.56ミリ小銃を構えたままの、迷彩服姿の自衛隊員に視線を向けた。

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