Escape from the DEAD
「あ、相沢君っ!」

ようやく芹が要の存在に気づく。

「下がってろ、来生!」

ゾンビはもう一体残っている。

要は手近にあった椅子を掴んで両手で持ち上げる。

緩慢に方向転換して、白目で要を見つめるゾンビ。

見えているのか、ただ眼がこちらを向いているだけなのか。

既に死んでいる眼球では判断できない。

両手を伸ばし、今にもつんのめりそうな足取りでユラユラと近づいてくる歩く死体。

酷い臭いだった。

もう腐敗が始まっているのか。

対峙しているだけで顔を顰めずにはいられなかった。

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