天使の涙


ある場所とは少し丘の上にある一本の桜の木の前。



桜の季節は過ぎていたので花びらは2、3枚しか残っていなかった。



ここは私にとって両親との一番の思い出の場所。



春になると毎年ここでお花見したよね。



ママはパパにここでプロポーズされたって言ってたよね。



ママのお腹の中に赤ちゃんがいるってわかった時、この思い出の場所に桜の木があるから子供が女の子だったら名前を「桜」にしようって決めたって嬉しそうに私に話してくれたよね。



思い出を一つ一つ振り返っていると涙が止まらなくなった。



その時、強い風が吹き、私の顔に桜の花びらがくっついた。



桜の木を見ると、もう花びらは残っていなかった。



最後の花びらだった。



私は桜に勇気をもらった気がした。



そして……



「パパ、ママ。私を守ってくれてありがとう。私、弱虫だしちっぽけな人だけど、一生懸命がんばるから、精一杯生きるから、天国で見守っていてください。」



そう桜の木の前で誓った。



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