<<side続編>>双子とあたし。
「ごめんな、こんな夜中に…」
『いいよ、昂太ならいつものことでしょ?』
慎司は笑っていた。
『…それで?用件は?』
「あ、うん。実はな…――――」
『俺の予想だと、薫ちゃんの話題か……。それとも歌詞の話?』
――――…慎司にはお見通し、か……。
適わねぇな。
昂太は心の中でふっと笑う。
「当たりだけど、俺に言わせろよ」
受話器の向こうからふふふ、と小さく笑う声がした。
『無理だよ。俺、空気読めないもん』
「『読めない』じゃなくて、わざと『読まない』の間違いだろ?」
『うん、正解』
昂太は大袈裟なため息をついてみた。
電話の向こうの慎司は、いつも優しく話す。
面と向かっている時は、一輝を困らすような発言ばかりしているが、それは慎司自身が遊んでいるのだと最近気付いた。
電話の慎司は美少年が話しているかのような声だ。
そんな電話の慎司に、昂太はこの時だけ彼を美化して話している。
もちろん、慎司も容姿は整っている方なのだが、この優しすぎる声に昂太はなんでも自分の悩みを打ち明けてしまう。
どちらが本当の慎司なのかの問題ではなかった。
昂太はそれ以前に、慎司に自分の思いを聞いて欲しかった。