<<side続編>>双子とあたし。
「……薫さん、綺麗だったな…――――」
独り言のように呟いた昂太の言葉に、あー…、と慎司も返した。
「俺、高校であんなに素敵な人がいたなんて知らなかった。ただ、悠太の大切な幼なじみ兼想い人なんだと思ってた」
『今日、会って…?』
昂太はゆっくりと深呼吸をする。
「後悔した。今はこの言葉だけだよ。なんでもっと気づかなかったんだろ、って…」
『そうだね、高校のときの昂太はただの節穴アホ男だったもんね』
「―――――…そこまで言うか、普通?」
『言わないだろうね。でも、俺は一番昂太の気持ちをわかってるつもりだから』
慎司の声が一層優しくなったような気がした。
それに包まれて、昂太は心がふわっと浮かんだ気分になった。
「ありがとう、慎司…」
『どういたしまして。………で、何が?』
「…………それは『読まなかった』のか?」
微笑みを溢す声がそっと聞こえた。
『さあね』
昂太は目を閉じて、思い浮べた。
―――――…バンドを始めようと話し合いをしたとき。
―――――…外国で腕を研こうとしたとき。
―――――…悠太に『薫』という想い人がいると知ったとき。