『ただ片想いに戻っただけなんだ』
何も言わずに私は下を向いて小さく笑う。



『照れたか?』



浩はイタズラっぽく笑う。



『照れてない!!』




素直じゃない、ひねくれ者。




損な性格。




いつもそう。



だけど、それでもいいやって思ってた。




けどそれが、



そういう小さな言葉がいっぱい重なって、



浩は私を拒むようになったんだよね。



きっと。




『よし!!じゃあ肉も食べたし、ドライブしながら送ってこか』




『うん』




また手をつないで歩いた。




車に乗り込み、次に浩が車を止めたのは静まり返った山の中。




『ここホタルが見れる場所やねん』




『ホタル?すごいね。見たい』




私の家の周りは明るくて、ホタルなんて見たことがなかった。




『ここは田舎やからなぁ。車のライトも消すで』




そう言ってライトを消すと、一面真っ暗。



横にいる浩の顔ですら見えないぐらいの暗闇。



そして静けさ。




何だかその静けさにちょっと緊張して、胸の鼓動が大きく音を立てる。




その鼓動が隣にいる浩にまで聞こえてしまいそう。




そんな静けさ。




ゆっくりホタルを待つ。





その静けさにドキドキして、私の気持ちはホタルどころじゃなくなっていた。





『ホタルなかなか出ないね』




私が小さな声でささやくと、




『今日は見えないんかなぁ』




と、浩も小さくささやいた。




そして、いきなり私にキスをした。




ちょっと驚いて浩を見つめると、今度はゆっくり私を抱きしめて、キス。

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