『ただ片想いに戻っただけなんだ』
ずっとこのまま。



このままの、キスをするだけの関係。



それだけじゃやっぱりダメなのかな。




それだけじゃ、いつかは私に背を向けて浩は歩いて行ってしまうのかな。




浩には、



浩にだけは、



嫌われたくない。






私は運転する浩の横顔をジッと見つめ、




『添い寝って?』




浩がどういうことを言おうとしているのかはちゃんと分かっていた。




だけど私は、そう聞いた。



浩はそれにあてはまる適切な言葉を選ぶかのようにゆっくりと、




『二人きりになれる場所で、何もしなくてもいいやん。二人でダラダラ周りを気にせずに過ごすのも悪くないやろ?』




運転しながら少しこちらに視線を寄せて、そう答えた。




『.....悪くはないんかもね』




私は冷静を振る舞い、そう答えるのが精一杯だった。



私のその答えに浩は少し驚きながらも、




『悪くないやろな』




と微笑んで、私の手を優しく握った。




そのまま高速を流れるようなスピードで走り、



浩はたまに私の方を見ては優しく微笑み、



私の手を、指を、ゆっくりなぞった。




高速を降りて少し走ると、きらびやかな場所。



何軒か連なるホテル。




急に不安が押し寄せた。




どう思うのだろう。




浩は私が初めてだということを知ったら、



やっぱり面倒だと感じるんだろうか。



初めてだっていうことが分からないように振る舞うことは、出来ないんだろうか。



.....我慢出来る痛みなのかな。




怖い。



怖い。



怖い。




浩に嫌われることが、何より怖い。
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