『ただ片想いに戻っただけなんだ』
2、誘い
何回もの彼からの誘いを受け、さすがに断り続けるのも悪い気がして来たときに、彼の、



『俺、嫌われてる?』の言葉に、



『そんなことない!!』と、大きく反応。



彼はビックリした顔をし、でもすぐにニッコリ笑って、



『じゃあ、今日ご飯でも行っとくか?』



と、小さな子供に話しかけるように優しく言ってくれた。


私は小さく頷いて、照れながら微笑んだ。


どうしよう。嬉しい。


だけど男の人と二人きりで何を話したらいいんだろう。


仕事のこと?



そっか。彼は仕事のことについて話したくて、私を誘ってくれていただけなのかも知れない。



男と女という感情は私の勘違いかも。


それなら恥ずかし過ぎる。



『もう行けるか?』



帰り支度を整えた彼が私に呼びかける。



『はい、大丈夫です』



ドキドキしながらも冷静を装って答えた。


もっと可愛い服を着てこれば良かった。


そんなところは冷静に判断出来た。


ピンクのカットソーにジーンズ。


男の人と出かけることなんて、ここ何年全くなかったし、元々オシャレにさほど興味をしめさない私は、毎日適当な服を着過ぎていた。



緊張と、そんな恥ずかしさもありながら、少し下向きに彼の後ろからゆっくり着いて行く。



『何で後ろ?横を歩けばいいのに』



笑いながら彼に言われ、慌てて彼の横に並んで歩いた。



『実久ちゃんって面白いな』



私の顔を覗き込んで微笑みむ彼にドキドキした。


同じ年にも関わらず、何だか大人の余裕。


大人。家庭があるからこその落ち着き?
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