HELLO
そのうえ、ため息を吐かれる理由がわからない。

「杏樹が行きたいところに連れてってやろうと思ってたのに」

ため息混じりで呟いて、片桐は髪をかきあげた。

「私の行きたいところ?」

そう聞き返した私に、
「映画とか美術館とか水族館とか、いっぱいあんだろ?

そこに連れてってやろうと思ったのに、お前は…」

呆れたように言う片桐だけど、どこかまんざらでもない様子だ。

むしろ、
「考えてくれてたんだ…」

てっきり自分の行きたいところに連れて行かれると思っていた。

それが意外過ぎて、私は恥ずかしくなった。
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