ファンタジスタ マジシャンズ

二人組

『ゆ、許してくだせぇ!!』

本日、何度目かの土下座。
それにかなり呆れながら、優輝はため息をついた。

「ねぇ優輝」
「ん?」
「疲れた」
「そうだな」

土下座する男を無視して二人はまた歩きだす。
港町を出てからというもの、盗賊やら山賊やら海賊やら魔物やらに襲われて、さすがに二人は疲れているようだ。
男に背中を見せた瞬間、地を蹴る音がした。

『舐めたらいかんぜよぉ!!』

たまぁとったらぁ!!な勢いで男は澪にナイフを持って突っ込んでくる。

「…そっか…」

澪がそう言った瞬間にはもう、男は燃えていた。

『あちゃー!!アチィ!!た、助けて!!』

髪の毛を燃やしながら、男は踊っしている。

「水かけてやるよ」

優輝が慈悲と言わんばかりに、男に言ってやると、あり得ない早さで首を縦に振った。
普通ならその早さで首を振れば火は消えるが、なんせ上級賢者の一発。酸素を補給したらしい炎は機嫌良く勢いを増した。

「澪」
「ん」

ん。の一言で男の頭に、滝のような水が落ちてくる。

『ぎぃゃぁあ!!』

水圧に負けて、再び男は頭を地につけた。そして

『申し訳ありません…』

深々とまた土下座を披露してくれた。

「そのセリフ飽きたな」
「飽きたね」
『そう言わずに…。かっこよすぎなお兄さんと可愛いすぎるお姉さん…』

その一言に、澪がキレた。

「誰が女だって?」
『もちろん、あなた様ですよ』

正座したまま、男は澪を見る。
優輝は、あぁ…コイツ死んだなと早々と脳内で男を殺していた。

男をプスプスと煙を出す消し炭のようにして、澪がぼやいた。

「僕は男だ」

書き忘れたが、小柄なうえに華奢な体つき、そして大きな黒い瞳にショートヘアを少し長くしたような髪。美少女と間違われたことが幾度となく澪はあった。

そのせいか、本人は女に間違われることを毛嫌いし、間違えた奴には半殺しにして詫びさせたのだ。
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