桜から君が降ってきた。
「今日、袖を通したばっかりの制服を初日から汚したくなくて…」
必死に思いついた言い訳がこれ。
この上なく、ひどい、ヘタレッぷり。
だけど、かすみちゃんは優しく、…少し残念そうに、微笑んだ。
「そっか…。お父さんとふたりだけって言ってたしね、あんまり汚して迷惑かけれないもんね…」
僕、最低だ。
本当は、制服のことなんかどうでも良くて、ただ単にやったことが無い木登りに怖気ついて断っただけなのに。
僕は自分のもはや救いようのないレベルのヘタレさにうなだれた。
微妙に気まずくなった空気を破るように、昼休み終わりのチャイムが鳴った。
「教室、戻るか。」
ひとりの男子のひと声にみんな従って教室へと戻り始めた。