桜から君が降ってきた。


あんな風に爽やかに笑顔のひとつでも簡単に出来たら、どんなに良いだろう…。



木登りさえ、好きな女の子の前で出来ない僕には到底無理な話だけど。



「ほらほら、早く決めろよ優。お腹空いただろ。」


うん、と返事をすると、後ろのテーブルの人たちがボタンを押したようで、さっきの爽やかスマイル青年がやって来た。

つい、聞き耳を立ててしまった。



「ご注文、お伺い致します。」


「あははっ、お兄ちゃんってばそんな感じでバイトしてんだー」



一瞬、幻聴だと思った。



でも、確かこの声は…。



「からかうなよ、かすみ。今バイト中なんだから」

さっきの爽やかスマイル青年の声がしっかり『かすみ』と言った。



やっぱり!かすみちゃんだ!



急に心臓がドキドキし始めた。



ん?でも今かすみちゃん、『お兄ちゃん』って言ってなかった?


「はいはいすみませーん、『乃木さん』。」


「こらっ。もう、かすみったら〜…。お兄ちゃんの邪魔しちゃダメよ。」


「注文するぞ…」



そっか、かすみちゃんのお兄ちゃんのバイト先に、かすみちゃんの家族が食べに来てるんだ。


僕は、ひとり納得して頷いた。


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