桜から君が降ってきた。
さっき、ついあの店員さんを目で追ってしまったのは、目がかすみちゃんに似ていたからだ。
兄妹なら、頷ける話だ。
「ほら、優。ボタン押すぞ。」
「えっ、待って。」
僕がパパを止めたとき、もう既にパパはボタンを押した後だった。
後ろで注文をとっていたかすみちゃんのお兄ちゃんが、「はい、すぐに伺います。」と言った。
それから本当にすぐにかすみちゃんのお兄ちゃんは僕たちのテーブルに来て、僕は大慌てでメニューとにらめっこすることになった。
パパはすぐにメニューの名前を言ってしまった。
どうしよう、こんなすぐに決められないよ!
かすみちゃんのお兄ちゃんを待たせてるのも申し訳ないし!
もう、適当に目についたのでいいや!と、適当なメニューを指差して口を開いた。
「あ、あのっ…この、『山賊焼きチキン』で!」
「はい、かしこまりました。では、失礼します。」
ふぅー、と息を吐くと後ろから肩をトントン、とつつかれた。
飛び上がって振り返ると、かすみちゃんが笑っていた。