桜から君が降ってきた。
「また会ったね、優ちゃん。」
「か、かすみちゃんっ…!」
かすみちゃんはもちろん制服ではなく、レースが可愛い白いパーカーに赤いチェックのスカート、そしてブーツ、という目の眩(くら)むような可愛い恰好をしていた。
「さっきの店員ね、あたしのお兄ちゃんなの。」
会話を盗み聞きしていたのだから、既に知っていたことだったけど、僕は「そ、そうなんだ…」と言っていた。
「それにしても、優ちゃんってすごいね。」
「え?」
突然、身に覚えのない讃辞を受けて間抜けな声が出た。
「山賊焼きチキン、すっごくスパイスが効いてて辛いのに!意外だなぁ、辛いの強いんだね。」
そんな!!
僕は内心、愕然とした。
よく分からないまま頼んじゃったあの『山賊焼き』って、そういう意味だったんだ!
僕の味覚の辞書には『甘い』しか存在しないようなもので、『苦い』『辛い』などもってのほかだ。
つまり、辛いものは苦手なんだ。
あぁどうしよう、泣きそう。