桜から君が降ってきた。
「はーい、みんな静かに~。」
担任の若い女の先生が教室で騒がしい生徒たちに声をかけた。
それから程なくして教室はシーンとなった。
や、ヤバイ…緊張してきた…。
僕は冷汗で湿った手をまだシワひとつついてなかった短パンになすりつけて拭った。
「今日からみんなは6年生ですね~。進級、おめでとうございまーす!」
先生がパチパチと拍手をすると、生徒たちも『わあ~っ』とパチパチ拍手した。
「それで、みんなには小学校最後の年を一緒に過ごす仲間が、ひとり増えるんですよー。」
「ええーっ!」
「転校生!?」
「男の子?女の子?」
生徒たちは一気に興奮したようにザワザワと騒ぎ始めた。
「じゃあ、登場してもらいましょうね~。」
教室のドアを少しだけ開けて先生が僕を覗いた。
「大丈夫よ、安心して。」
そう言ってにっこり微笑んだ。
その微笑みに弱々しく返した瞬間、教室のドアは大きな音をたてて開かれた。
その音にビックリして大きく肩が飛び上がった。
そして、僕に集中する、目、目、目。
ゴクリと唾をのみこんで教室の中へ足を踏み入れた。