桜から君が降ってきた。
僕は救急箱を見回して湿布を探し出した。
それを見て、かすみちゃんが不思議そうな顔をするのが分かった。
「それくらいの処置なら、僕出来るからやってあげるよ」
「えっ」
ドアのところにいるかすみちゃんに手招きして保健室に入ってもらった。
今は体育の授業中だから、かすみちゃんは体操服に身を包んでいた。
かすみちゃんは少し躊躇うようにおずおずと寄ってきた。
ハサミでちょうどかすみちゃんの指に合うように、湿布を切る。
「優ちゃんは、どうしてここにいるの…?」
かすみちゃんはそっと左手を僕の方に差し出して、俯きがちに訊いてきた。
「このあいだレストランで咳き込んだでしょ、僕。それで治まってた喘息がやっぱりぶり返しちゃって。今は、良く言えば欠課、悪く言えばサボりだよ。」
「そうなんだ…」
細い指の少し腫れたところに切った湿布をそっと貼った。
それから、その軽く曲がったままの指に包帯をくるくる巻いていく。
「すごい、手際良いんだね。」
かすみちゃんが関心したように僕を見上げて言った。
僕はそれに、ははっと笑って答えた。
「一年生の時から保健室にはお世話になりっぱなしで…保健室の常連なんだ。だから、先生の手元とかよく見てたら手当ての仕方とか覚えちゃって。」
「へぇ…」
病弱な男の子って、ダメダメじゃん。
心の中で思わず自嘲してしまった。