桜から君が降ってきた。
「本当に、すごいよ…」
「え?」
僕はびっくりしてかすみちゃんをまじまじと見つめてしまった。
『すごい』なんて、あんまり良くないことを形容する時くらいしか使われたことがなかったから。
「優ちゃん、お医者さんとかに興味あるんじゃない?」
「……」
確かに、小さい頃から頻繁に病院にお世話になっていたから、必然的に僕の興味の的は、身近になってしまったお医者さんや看護師さんだった。
「手際良いし、優ちゃん…優しいから…」
今度こそ、本当にびっくりした。
だって、かすみちゃんが、少し赤らんだ可愛い顔で『優しい』なんて言うから。
恥ずかしそうに少し俯いて、伏せられた目を縁取る睫毛。
細くて白い首、腕、脚。
華奢な身体の小さな、胸の膨らみ。
急に、かすみちゃんは『女の子』なんだと意識し始めてしまった。
どくん、どくん、どくん____、
鼓動が、速くなる。