桜から君が降ってきた。
かすみちゃんはちょっと得意げに、ふふふと笑った。
理事長って…理事長って…
ぐるぐると頭の中にその三文字が渦巻く。
……理事長って、何?
「…あの、理事長って何?偉い人?」
すると、かすみちゃんはマンガかコントみたいにずるっと滑って身体を揺らした。
「うん、そうね偉い人ね、うん…」
「ご、ごめん、わかんなくて」
かすみちゃんは気を取り直したように居住まいを正すと、僕の目を見て話し始めた。
「あたしのおじいちゃんのお父さん、つまりあたしの曾祖父はこの学校の創設者なのよ」
「へえーっ、そうなんだー!」
「そろそろ世代交代で、次はあたしのお父さんが理事長になることになってて…。…ってこれはあんまり関係ないか。だから、開校当時の様子とか小さい頃から伝え聞いていたの。」
「そうだったんだー…」
学校案内のパンフレットに載っていたであろうかすみちゃんのおじいちゃん、もとい理事長の顔写真を思い浮かべようと……したけどムリだった。
誰が理事長の顔なんか知りたいと思って写真をちゃんとみるだろうか。
でもちょっと申し訳なかったから、お会いし(いや、拝見し)たこともない理事長に心の中でごめんなさいした。