桜から君が降ってきた。


先生の手が僕の背中に添えられて教卓の前まで連れて行かれた。


先生の目が『ほら、今よ。』と、笑った顔のまま自己紹介を促してくる。


僕は身体を強張らせたまま再び唾をのみこむと、口を開いた。



「す…すじゅきゆうッ…あ、」

か、かんだ…!!自分の名前かんだ…っ!


一瞬の間にパニクってどわっと汗が噴き出る。

教室の空気は、その一瞬の間に固まった。







「あははははははっ」

ひとりの女の子が最初に笑い出した。

ちょっとつり上がり気味の大きな目を半月みたいにして。


すぽん、と何かが僕の中で落ちた。


それにつられて周りも笑い始めて、教室は爆笑の渦の中となった。


かあぁっと顔が熱くなる。なのに、周りにつられて原因は自分なのに自分までヘラヘラと笑ってしまった。

先生も苦笑いだ。


「はーい、みんな静かにー。で、本当のお名前は?転校生くん。」


先生が生徒たちを静めてから言った。


今度は間違わないぞ、と慎重に再び口を開いた。

「鈴木 優(すずき ゆう)です。よろしくお願いします。」

そう言って、ぺこりと頭を下げた。

すると、パチパチと拍手をされた。


ふぅ、とひと息をつく。


挨拶ひとつでこんなに苦労するなんて、僕ってダメだなぁ…。


微妙に落ち込んでしまった。




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