桜から君が降ってきた。
「―――――!」
言葉に、出来なかった。
田んぼや、畑、まばらに建つ家々、小さな工場、山から流れ 町を裂く川。
すべてが、朱、橙、黄金、紺などに染まっているのが視界からはみ出るほど美しく在った。
そして、遠くの山際のふちに入ろうと傾いている太陽。
大きくて、紅く、揺れていた。
まるで、さっきのかすみちゃんの瞳のようだった。
僕は ちっぽけだ。
僕がヘタレなことなんて、この景色のすばらしさに比べたら、どれだけ些細なことなんだろう。
僕は、『僕』だ。
代わりなんてこの世のどこにもいない。
「優ちゃん。」
「何?」