桜から君が降ってきた。



「さあ、わが校の名所のひとつ!“大桜”ですよー!」



大桜、と呼ばれたその桜は、ちょうど七分咲きくらいの桜の大木だった。



「う、わ……」


感嘆の声さえまともに出せないくらい、僕はその樹に目を、心を、奪われてしまった。



樹齢何年かなんて全くわからないけど、とにかく大きくて太い幹や枝。

そしてその枝から咲く何千、いや、何万もの桜の花。

まだ満開ではないが、その姿は神々しいとさえ感じた。


すると、少し強い風が吹いて、サアッと花びらがいくらか散ってしばらく辺りを舞っていた。



その光景にも、言葉を発することを忘れたように見惚れていた。





「すばらしい桜でしょう。」


かすみちゃんは、そっと僕の様子を伺いながら言った。


ぼうっとしていた僕は、はっと我にかえって相槌を打った。



「うん…。とっても、綺麗だ……」



大桜を見上げて、それから、まだ夢見心地のままかすみちゃんに向き直って言った。



すると、みるみるうちにかすみちゃんの頬が、それこそ“桜”のような色になった。



ん?と不思議に思っていると、小さく周りから「やるね、優ちゃん」「見直したわ」「いいなぁ、かすみ」「よっ、男前~っ」、というような野次が飛んできた。


訳がわからない。




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